スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

  • 2015.07.01 Wednesday
  • -
  • -
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

タダオモデルのシタール製作秘話

皆様ご無沙汰してます、なますて。先日インドより帰国しました。



ところで今回、新しい楽器を作りました。生徒の楽器を作ったりする事はあっても、自分で使う楽器をオーダーしたのは実に14年振りくらい。

実は結構前から新しい楽器が1本欲しかったのですが、その理由は普段メインとサブで使っている楽器が一般的なシタールの中では結構大きめの物で、C#のキーがピッタリなのですが、ピアノなど西洋楽器と一緒に演奏したりする時にチューニングを半音あげてDにすると弦のテンションが結構きつくて演奏し難かったのが一番の理由でした。

そこで、そういった西洋楽器との演奏の時に使用する事が前提だったので、Dでの演奏用にネックのスケールも少し短めで、できればマイクも内蔵したいという考えがあり、既にインド国内の幾つかのメーカーからボディーのバックに瓢箪を使わない木製のシタールとか、ピックアップ内蔵のとか、ペグもギターに使われるようなギア式ペグを使った物など、既製品でも存在したのですが、中々納得のいくクオリティーの物が無かったので、自分でベースのデザインやコンセプトを考えて、昔からお世話になっていたコルカタの老舗工房HEMEN&COにオーダーしてみました。

因みにオーダーしたのは去年のコルカタ滞在時。老舗工房とは言っても、僕の楽器を2本製作してくれた先代のヘメン爺さんは数年前に他界してしまったので、店を継いだ息子にオーダーしてみました。この工房は他のメーカーが時々新しい素材や形の楽器を作ったりするのに対して、本当に昔ながらの物しか作っていない工房。なので、オーダーする時は弱冠おだてる感じで、


タダオ「○×○×な理由でな、新しい楽器が作りたいねんけど、いや、既製品でもあんねんで、ほら、デリーの○×とか、でもやっぱりここの楽器が1番やんか、ね〜、作ってみてや〜!」

息子「シタールは普通のが1番や!あんな瓢箪使ってないシタールとか、ギターペグのやつとか、あんなんシタールちゃう!絶対に作るん嫌や!」

タダオ「ほな何かアイディア考えてや!職人やろ!困ってる言うてんねん!」

息子「嫌や!嫌や!」

タダオ「スールバハール(ベース音域のシタール、バックに瓢箪の下半分を使い、ボディーの形はフラットやけど通常のシタールより巨大な楽器)あるやろ?あの形めちゃ小さくしてDスケールで作られへんの?」

息子「それはいける。」

タダオ「いけんのかい!!」


というわけで、こういう具合に職人とアイディア出し合って、無事に?去年オーダーしてきました。10ヶ月あるから、ゆっくり丁寧に仕上げてと。その後、僕が日本に居る間も時々工房に電話しては、調子どう?作業進んでる?とプッシュして、何とか今回の滞在中に仕上げをして楽器を受け取れる事に。



これは製作途中。実は瓢箪をこういう形にカットして使った楽器は大昔にはあって、カチュワ(亀)シタールと呼ばれていました。なのでペグの付き方もヘッドの白鳥デザインも昔にあった物を、そのまま小さいスケールにしただけの楽器です。ヘッドをこの形にしたのも理由があって、椅子に座って演奏した時を想定すると、ペグは両サイドに合った方が超弦しやすい理由で。因みに材質はトゥン材で表板だけチーク材が使われています。

楽器の仕上がりの目途もつき、今度はケースの話。全体的な形がフラットなので、たぶんアコースティックベースのケースとかキーボードケースとか何か入るケースがあると思ってたのですが、とりあえず飛行機で持ち帰るのにケースは必要。とりあえずイレギュラーな形で作ってしまった楽器なので、既製品のハードケースは無理。かと言って、型を作ってハードケース特注するのは時間が間に合わない。

すると、楽器屋が海外に発送する時に使う木製のケースしかないという話になって、紹介された大工さんを連れて楽器工房へ行き、楽器を隅々まで採寸して、木製の輸送用ケースを作ってくれる事に。大工さんの話によると、中に発砲スチロール厚めに入れてベルベッドでカバーして、重さも大体15キロくらいかな〜。って聞いて、安心した。

数週間後、楽器も仕上がり、ケースも仕上がったとの連絡が入ったので、とりあえずケースを受け取りに大工さんの所に行くと、目の前には信じられない物が…。

小柄なアジア系成人男性が中で昼寝できるくらいの大きさの巨大な木箱…。え!??と思って、とりあえず持ち上げてみると、持ち上がらない…。軽く25キロ以上ある…。

唖然として、大工のおっちゃんに


タダオ「あの…これさ、どうやって持って帰ればええんかな…?」

大工「うん…1人じゃ無理やわ…。」

タダオ「1人じゃ無理って、どうすればええねん…。」

大工「せやな〜、それなら…(横で木を切っていた若い職人を指さして)その子にヘルプさそうか?連れて行ってもええで。」


何??何??めちゃ衝撃!こら〜!!俺コルカタから大阪行くねんぞ〜!ダージリンに茶摘みに行くんちゃうねんぞ〜!!大阪って何処か知ってるか〜!!?

どうしようも無いので、とりあえず楽器を入れて、タクシーで家まで持ち帰る事に。日本のタクシーより車幅の大きいコルカタのタクシーでも、座席に収まらない…。結局タクシーの後ろにケースが3割ハミ出した状態で、安全運転で家まで持ち帰ったケースがこちら↓




あかん、絶対にあかん、メインのシタールも持って帰らなあかんのに、25キロの巨大木箱とスーツケースと、ハードケースに入れたシタールもう1本、預け荷物で預けたら、えっと荷物超過料金は…、あかん…天文学的数字。

この時点でコルカタを出発する10日前。10日以内にどうにか別の輸送方法見つけないと…。あ!もしケースに入れずに生の楽器だけを当日チェックインカウンターに持って行ったら、何とか機内持ち込みできるんじゃないか?

と思って、某インド系航空会社の市内オフィスに行ってカウンターのお姉さんに聞いてみた。


タダオ「すみません。実は○×○×の理由でケースが無いのですが、持込荷物でどうにかいけませんか?

お姉さん「あら、大変ね。状況はわかったわ。本社に聞いてみるから少し待ってて。」

タダオ「すみません。御親切にありがとうございます。」

お姉さん「本社に聞いてみたんだけど、その楽器は明らかに手荷物としてはサイズオーバーよ。でも、そんな物預けたら壊れるから、仕方なく機内に持ち込みを認めるかもしれないわ。でもそれはチェックインカウンターの職員の判断だから、ここでは今何とも言えないわ、という事で、何て言うか…あなたの運次第よ。」

タダオ「そうですか。ご丁寧にありがとうございました。」


航空会社の市内オフィスのスタッフが「☆ 運 次 第 ☆」って何やねん!!何??衝撃☆!!空港行く前に厄払いとか、お参りとか行った方がいいかな??

というわけで、その方法は結構リスキーな事が解ったので、別の方法を探すことに。ダメ元でいつもファイバーグラスのケースを頼んでたケース職人ニルマレンドゥに電話して、一度楽器を見てもらう事になった。さすがに型から作るのは時間的に無理なので、何かの楽器ケースに入らないか見てもらったところ、スールスリンガール(サロードを巨大化させたような古楽器)のケースを以前にオーダーした人が居て、そのケースなら何とか入りそうと言うので、超特急で作ってもらえる事に。普通のシタールケースに比べたら大きいけど、お棺のような木箱より全然良い!重量も11キロくらいと、少し重いけど全然マシ。結局ケースが大きくて余分なスペースがあったので、クッションを多めに入れて解決。




コルカタを出発する前日にケースを受け取り、無事にデリーまでフライト成功。あ、あの巨大な木箱は、コルカタの家でちょうど良い高さの腰かけになっています。4人は座れるかな。

デリーでは、いつも楽器の調整を頼んでいる楽器メーカー、リキラムのサンジャイの所へ。コルカタで受け取った真新しい楽器に既に問題が発生していたので見てもらった。問題と言うのは、今まで見た事無いくらい楽器の表板を薄く作りすぎてて(そんなオーダーはしていない)楽器が完成して2週間も経ってないのに、表板が弦の圧力に負けて変形してた。そんな話あの工房の先代、故・ヘメン爺ちゃんが聞いたら失望するような話だけど、どうにか良い解決方法は無いかサンジャイと相談。そこで、せっかくギターみたいな薄さで表板があるなら、それこそギターみたいに表板の後ろ側からメイプルの木で支えを入れてしまえば、弦の圧にも耐えれるし、面白い感じになるかもしれないとの事で実験。そして、修理で表板を開けるついでにマイクも中に内蔵しようという事に。なので実際今回の楽器はヘメンとリキラムのダブルネーム↓



そんなこんなで、やっと思ってた楽器が完成。タダオモデルのシタール、100%の満足度とはいかないけど、とりあえずはライブやレコーディングで使ってみる。そりゃ、この経験を元にもう1度オーダーしたら更に良い物になると思うけど、もうそんな気力は無い…。因みにこのマイクは軽量トランスデューサーで、アヌーシュカ・シャンカールがレコーディングやライブで使用している物と同型。瓢箪からキャノンアウトが個性的。



音は、まだ新しい楽器なので全体の鳴りは無いけど、表板が薄いのとバックがフラットなので、共鳴弦の響きと立ち上がりが良い感じ。そして内蔵マイクが驚くほど胴の鳴りも録ってくれる。

りあえず、今回一番わかったのは、イレギュラーな楽器を作ってしまうと、ケースから何から全てオーダー、そして手間がかかりすぎるという事。もうしない…。手間がかかった分、愛着も湧きそうな楽器なので、楽器に名前をつけてみた。鳥の頭なので、命名「ピーちゃん」ピーとは鳴かない鳥の頭だけど、昔買ってたオカメインコの名前がピーちゃんだった。あ、それなら白鳥の頭じゃなくて、次回はインコ形にオーダーしようか?しない。もう楽器のカスタムオーダーなんてしない。こりごり。



というわけで、タダオモデルのニューシタール。近々ライブで披露します!

楽器と音楽



シタールについて

シタールは今日の北インド古典音楽の中で大変ポピュラーな楽器の一つであり、古典音楽以外にも幅広いジャンルで使われています。1970年代にビートルズが楽曲にシタールを使用した事もあり、その頃からシタールの知名度は世界的な物となりました。そしてシタールは現在でも様々なジャンルの音楽で使用されています。

シタールの歴史はインドで数多くの古い文献にも登場するトゥリ・タントゥリ・ヴィーナ(サンスクリット語で3弦楽器の意)を元に、後になり北インド古典音楽の歴史においての大変重要な人物でもあるアミール・フスロー(1253年〜1325年)の手により発明されたというのが今日の一般的な説で、シタールの直接の語源となったのはペルシャ語で3弦を意味するセタールと言われています。現在でもイランなどでは同名の楽器が使われています。その頃のシタールが一体どのような形状をしていたかは不明ですが、長年に渡り様々な形状や素材を用い改良が施され、比較的近年になり7弦のシタールに共鳴弦が取り付けられた物を元に、流派や演奏家のスタイルによって弦の数や形に更なる改良が施された現在のシタールになりました。

現代のシタールの一般的な素材は共鳴胴の部分に巨大な瓜を用い、表板や竿にはシダーやマホガニー、チークなどの木材が用いられます。石濱匡雄の奏するマイハール流派のシタールは4本の主奏弦に2本〜3本のリズム弦、そして13本の共鳴弦から成っており、ヴァイオリンのような高音域からチェロのような低音域まで幅広い音域を出す事が可能で、シタール上部には低音域を増幅させる働きのある取り外し式の瓜をもう一つ装着します。このような構造により現代のシタールは奥行きのある音色と、一本の楽器が演奏されているとは思えないようなリズムと旋律が重なった幅広い表現が可能な楽器です。



 北インド古典音楽について

インドの芸能において広く使われるサンギータという言葉。これは3つの言葉「ギタ(声楽)、ヴァッデャ(器楽)、ヌリッティャ(舞踊)」の組み合わせによって成り立ち、この言葉は幾つかの古代の文献「ラーマヤナ(紀元前300年)、マハバラタ(紀元前200年)など」にも見つける事ができます。北インドの歴史上、後に西から流入してきたイスラム文化と土着のヒンドゥー文化の両方に影響を受けており、特にムガール王朝時代に北インドの古典音楽は宮廷音楽として大きく発展を遂げ現在のような形になりました。

北インド古典音楽はラーガ(旋律的テーマ)とターラ(リズムパターン)の2つを厳密に意識した上で即興的に演奏され、メロディー奏者とリズム奏者が緩やかなテンポから徐々にスピードを上げて徐々にクライマックスに至るその音楽形態は、甘美さと激しさ、スピリチュアルでありながらエンターテイメント性に溢れており、まさにヒンドゥー文化とイスラム文化が融合して生まれた産物と言えます。近年ヨーロッパの一部ではインド古典音楽を、その音楽形態の独自性から民族音楽の枠を越えた新しい音楽ジャンルとして確立しようとする動きもあり、インド音楽の幅は世界的な物となりつつあります。



 マイハール流派について

本来マイハール流派という流派は存在しません。15世紀の音楽家ミャーン・タンセンの流れを組む音楽流派はセニ流派という流派なのですが、後にその直系の1人アラウッディン・カーンが演奏スタイルや楽器に様々な改良を加えて、大きく発展を遂げた現在のスタイルを後に人々がマイハール流派と呼ぶようになりました。このマイハール流派の特徴は他の器楽の演奏スタイルが声楽を模倣する物が殆どだったのに対して、器楽として独自の世界観を創ったと言われています。この流派が有名になったのは、アラウッディン・カーンが教育者として多数の有能な弟子を育てた功績もあります。その中にはシタール奏者のラヴィ・シャンカール、サロード奏者のアリ・アクバル・カーン、バハドゥル・カーン、映画音楽で有名だったティミル・バランなどが居ます。ドゥルパッドという重厚なスタイルをベースにしながらも器楽ならではの現代的要素も見られ、シタールでは2大流派の1つと言われています。




 使用楽器について

石濱匡雄が主にコンサートで使っているシタールは約200年前に切られたチーク材で作られています。チークの中でも最高級素材として珍重されている希少なビルマチーク(正式名称 ダラットチーク)が材料です。そのような良質なチークを、楽器を作るためだけに誰かが200年も寝かせていたのではもちろんありません。その理由は当時インドと同じくイギリスの占領下にあったビルマからチークを伐採し、当時の英領インドの中心であったカルカッタ(現コルカタ)に建物を多数建設しました。歴史的な建築物を除いて、必要の無い当時の建物は取り壊された理由で、木材としても大変丈夫なチークはその廃材を利用して楽器に使われました。エコをテーマに廃材を使って何かを製作するのが一時日本でも流行しましたが、それ以前にインドではこういった形で廃材が利用されてきました。
 楽器製作者について

石濱匡雄が高校時代からお世話になっている楽器職人が居ます。それは今インド国内で最高齢の楽器職人とも言われる有名な楽器製作家、ヘメン・チャンドラ・セン氏です。ヘメン氏は現バングラデシュのクミッラに居た当時の有名な楽器製作家アヤト・アリ・カーン氏の工房で幼少の頃から楽器職人としての研修を積んでこられました。後にカルカッタに自身の楽器工房HEMEN&COを開いて以来、シタールのみならず様々な楽器において、彼の作品はインドのトップミュージシャン達に愛用され、インドのメディア等でもインドのストラディヴァリウスとして称されてきました。現在でもヘメン氏は高齢でありながらも毎日のように自ら工房に座り、朝から晩まで楽器製作を自身の工房で続けています。

| 1/1PAGES |

calendar

S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< April 2017 >>

selected entries

categories

archives

recent comment

  • マーチェル(魚の)マタ(頭)ディエ(で)プラオ(炊き込みご飯)のレシピ
    TADAO (12/05)
  • 今週末の連休は西日本最大のインドイベント「インディア・メーラー」!!
    TADAO (12/05)
  • BhangraやBollywoodだけがインドのPopsでは無い!インド各州のインディー系アーティストを紹介する番組「The Music Project」
    TADAO (12/05)
  • BhangraやBollywoodだけがインドのPopsでは無い!インド各州のインディー系アーティストを紹介する番組「The Music Project」
    ユウジ (11/14)
  • 今週末の連休は西日本最大のインドイベント「インディア・メーラー」!!
    てるよ (10/05)
  • マーチェル(魚の)マタ(頭)ディエ(で)プラオ(炊き込みご飯)のレシピ
    まもり (12/30)
  • ベンガル語の会/インド音楽の会
    shiho (06/13)
  • カルカッタナイト+南インド料理+今年のダージリン紅茶のお土産付き!!
    TADAO (04/08)
  • 帰国後初ライブ☆
    TADAO (04/08)
  • カルカッタナイト+南インド料理+今年のダージリン紅茶のお土産付き!!
    Himali (04/07)

recent trackback

recommend

recommend

recommend

links

profile

search this site.

sponsored links

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM